「……お湯、沸いてるけど」

「ぎゃっ!!」

後ろから聞こえてきた声に、思わず飛び跳ねる。


本当にもう……朝から心臓に悪すぎだし。

慌ててコンロの火を消し、彼にバレないように深呼吸をしてから振り向く。


「お、おはよう」

平然を装ったつもりだったけど、やっぱり詰まってしまった。

「コーヒー、今入れるね」

「……あぁ、ありがと」


顔を合わせずらくて再び後ろを向くと、彼が椅子に座る気配がした。


「あ〜頭いてぇ……。飲みすぎかな」

それに対しては何とも言えない……。
あたしは、あえて何もコメントせずにコーヒー豆の袋を取り出した。


コーヒーはママのこだわりで豆から引くのが我が家の鉄則だ。

最近お気に入りだというブルーマウンテンのコーヒー豆を引き始めると、とても良い香りがリビングを包む。

すると、彼が顔を上げて辺りをキョロキョロと見渡した。


「あれ……。そう言えば、社ちょ……お母さんは?」