エレベーターに乗り、エントランスまで一志を見送る。


「なんか、ごめんね。
せっかく来てくれたのにろくに話せなくて」

「あーいいよ、別に。
久々に奈々子さんと話せたし。相変わらずお喋りですげぇ懐かしかった。
ありがとな」

「うん……」

最後まで気遣いを忘れない一志に、胸がチクリと痛む。

罪悪感……なのかな。

予想外の事態だったとは言え、彼氏以外の人とキスをしてしまったことに変わりはない。



「んー!!
寒いけど、気持ちいいや」

オートロックのドアを開け、外の空気に触れると、一志が大きく背伸びをする。
そして、一歩後ろにいたあたしの方を振り返ると、フッと微笑んだ。


「……なんかさ。オレらってやっぱり似てるのかもな」

「え……?」

「いや、境遇っつーの?
ウチも母親再婚したし。そういう意味ではお互いに分かり合える部分があるのかなーって」

そう言うと、さりげなく片方の腕であたしを抱きしめる。