「……悪かった。 オレ、なんか今日むしゃくしゃしてて」 しばらくして、ため息を吐きながらそう漏らすと、彼は掴んでいたあたしの腕をそっと放してくれた。 「泣かせるつもりなんてなかったんだ。 ただ、オレ……」 真っ直ぐな視線が、あたしへと向けられる。 あたしは、着ていたセーターの袖で涙を拭くと、ゆっくりと顔を上げた。 重なる視線。 テレビの音も、光もなくなって。 この空間に、彼しか見えなくなる。