問いかける声が、穏やかに鼓膜を震わせる。 ――何よ……。 急にまた、優しくなっちゃって。 さっきまで、機嫌悪かったくせに、そんなのってズルい……。 「……別に、泣いてなんかないし。寒かったから、鼻が冷えただけでしょ」 揺れ動く心を必死で食い止める。 それなのに。 「……泣いてるだろ?」 「泣いてない」 「嘘つけ」 「っ!だからっ!! 泣いてないって……!!」 その瞬間……、 グイッと、力強く腕を掴まれた。