翌日、一志は、あたしよりも早く待ち合わせ場所にいて。

昨日作ったケーキを渡すと、とても喜んでくれた。


「オレがケーキ好きなの、覚えててくれたんだ?」

「……うん、当たり前じゃない」


忘れるわけない。

すごく好きだったから。
お互いの好きな物も、嫌いなものも。


たくさん話して来たから。



「食ってい?」

「え……ここでっ?!」

「だって、オレの為に作ってくれたんだろ?嬉しいじゃん」


何気ないその言葉に、胸がズキンと痛んだ。


元はといえば、彼に気持ちを伝えるために買ったもの。


でもやっぱりできなくて。

あたしは今日、こうして一志と会っている。