だから、あたしは全く知らなかったんだ。 あたしが、深い眠りに入ってすぐに、 そっとドアを開ける音がしたことも。 その時入って来た人が、あたしのそばまできて。 優しい瞳で寝顔を見ていたことも。 そして――。 あの日、あたしを抱きしめたゴツゴツした手が、あたしの頭にそっと触れたことも……。 全然気付かずに、あたしは夢の中にいた。 夢の中であたしは……誰かの隣で、幸せそうに笑っていた。 手作りのお弁当を、 一緒に食べながら――……。