オーブンから、チョコレートケーキの甘くて香ばしい香りが漂ってくる。 ……もうすぐ、焼けるころかな。 あたしは、食卓の椅子に腰を下ろすと、ゆっくりと口を開く。 「梨花子、ありがとう。 心配して電話くれたんでしょ?」 「美未……」 「でもね、もう決めたんだ」 「でも……」 「決めたの」 ――チン!! あたしの決意の言葉と同時に、焼き上がりを知らせる音が、オーブンから響いた。