だけど、思った。
別に、彼に言ったところで、何かが変わるわけではない。
彼は興味本位で聞いているだけだ――……。
そんなの、分かりきったことなのに。
やっぱり知られたくないと思ってしまう。
でも、その一方で、一志のことも気になってしまうのは、なぜだろう?
「……ごめん、今の忘れて」
その声にハッとして我に返ると、車はすでにマンションの駐車場に停まっていた。
ふと彼を見ると、何とも言えないような表情で、あたしを見ていた。
「……帰ろうか」
小さな声でそう言い、ドアを開けようとした彼。
でも……。
「っ……!待って!!」

