――ガチャリ。


中から鍵を開け、あたしはその人物を見つめる。



「……どうしたんですか?」




そこには。

ビシッとグレーのスーツを着こなし、ママと一緒に出かけていったはずの彼が、
なぜか息を切らしながら立っていた。




なんで??

どうして……??


予想もしていなかった出来事に、あたしは正直驚きを隠せない。


支度がいつもギリギリまで終わらなくて、挙句忘れ物女王のママが戻ってくるならまだしも、今日は彼だし。

一応、この家の住人なんだからわざわざチャイムなんて鳴らさなくてもいいのに。


「あ、えっと……

何か忘れ物……ですか??」


内心ドキドキしながらやっと口にした一言に、彼は静かに頷いた。