「えっ?!島沢さん??」


空野握手が指差した方を慌てて見る。
その時 癖なのか、右手は胸まである巻き毛をついつい、くるっと握ってしまう。




「何よ、どこにもいないじゃない」



廊下も玄関も、授業が始まった為に、シンとしている。

チキショー。
こんな古典的なのに、引っ掛かってしまった。



「……めっさ恋してますね、島沢さんに」


「……悪い?」


女に興味のない貴方は、恋する乙女の気持ちなんか分からないよね。

………ん? 逆に分かるのか?



「いえ 、悪くないです。島沢さん今月誕生日らしいですもんね。
その為のアルバイトでしょ?」

「そう、私も、家もそんなにお金持ってないから………」



友達とかにも言えない家庭の経済事情。


なんで、この子には言っちゃうかな?






「またまた見た目を裏切る発言……
いいっすよ、誰にも言いません」



空野握手は、馬鹿にすることもなく、そして、先輩のために巻いた私の髪を見ながら、



「女の子が好きな人を見つけたり喋ったりして、嬉しかった時って、
そんときの感情、どう表現するんですか?ドキマギですか?」


とても、可愛い質問をしてきた。

こいつ、



「うー ん…ベタな表現なら……

〃キュンキュンする〃 とかかな?」



BLかと思ったけど、
もしかしたら、
ただ、恋をしたことがないのかもしれない。



「………ヘェ………」





「ちょっと??モモ、なにやってんの?!」