変わりたいと、そう思う気持ちはあった。一生男嫌いでいるわけにもいかないと、私は気付いていた。大学にだって入りたいし、勿論その後は社会人にだってなる。男と関わらないで生きていくなんてきっと無理なんだ。

 それに――

 私は身支度を終えると、手帳を開く。四月十七日。学校が始まってちょうど二週間だ。今日の日付に丸をつけてある。週に一回の楽しみだった。今日は家庭教師の『お兄さん』がやってくる日だ。



 お兄さんの名前は、関根智幸(せきねともゆき)。

 私が幼稚園生の頃から近所で仲良くしてもらっている人だ。今は大学四年生で就職活動をしているらしい。お兄さんは、中学一年の頃から勉強を教えてもらっている。

 大学も名前を聞けば誰もが知る、一流の私立大学だ。小さい頃から優しくて、私の悩みごとにも相談に乗ってくれる、私の憧れの人。気付けば、いつかお兄さんと同じ大学に行きたいな、とそう思うようになった。だから勉強も頑張れるし、何よりお兄さんと勉強するのは楽しい。

 私が、お兄さんを、男の人と意識するようになったのは、中学生の時だった。男の人は嫌いだけど、お兄さんだけは特別なんだといつからか思うようになっていた。

 お兄さんに彼女ができたという話を聞く度に悲しくなって泣いたこともあった。最近は付き合っている人はいないらしい。