「男嫌いなんだろ?」
「っ……」


――ふざけるな! 一体全体誰のせいでっ!

 喉元まで出かかって、私は堪える。ダメだ。ここは我慢しないと、私の平穏はやってこない。


「もう、いいから。関わってこないでっ」


 堪忍袋の緒が切れる寸前だった。突然ため語を聞いた私に戸津はきょとんとする。

 だめだ、だめだだめだ。このまま話していたら。私が私でなくなる。

 胸のあたりに暗い渦が広がっていく。正常な思考がなくなっていくのを感じる。感情に負けるな。もう少し、もう少しでこいつとの話し合いは終わるはず。


「お前の男嫌い、俺に直させてくれないか」
「無理」
「え?」
「無理に決まってる。だって、私は戸津のせいで、こうなったんだから」
「そうなのか?」


 その一言で、私は我を失った。


「そうなのか? だって?」


 ダメだ。やめろ、私。


「私の人生を狂わせたのは、誰だと思ってたの? 私がわざわざ遠い中高を選んだ理由はなんだと思ってた? 全部はあんた達のせい。あんた達がいなければ、戸津さえいなければ……」


 それだけ言って、感情がおかしくなった。泣くな。こいつの前だけでは絶対泣いたらいけない。

 私はそれだけ言うと、立ち上がり荷物を手に取る。限界だった。胸の奥が締め付けられる。嫌な思い出が頭の中を駆け巡る。


「お、おい。待てよ。話しはまだ終わってな……」


 戸津の制止を聞かずに私は早足でその場を去り、学食へと向かった。早く、早く春ちゃんのところへ――


 私の高校生活は最悪な幕開けだった。