【完】『大器晩成』


しばらくして。

眞姫の初の個展が開かれ、初日はギャラリーには師匠の麟太郎と、梓やセイラ、さらにセイラの彼氏の漫画家も顔を出した。

ギャラリーには眞姫が例の小さな窯で焼いた器たちが並ぶ。

ロビーにはグラビア時代からの仲間であった、モデルやタレントなどからのメッセージなども、寄せられてある。

例の、

「美人すぎる陶芸家」

というキャッチーなコピーのおかげか、観衆は圧倒的に男性が多かった。

そのなかに。

明らかに見覚えのある、髪の毛の真っ白くなった父親の姿があった。

執行猶予の判決が出たあと、初めて東京に来たらしい。

一瞬、視線が合った。

しかし。

眞姫はすぐに目線を切って、グラビア時代にときおり見せていたような、冷ややかな面持ちになって、何事もなかったかのように、バックヤードへと姿を消した。

やや間があって。

不審者がいるという騒ぎが聞こえてきた。

が。

眞姫は何食わぬ顔で、テーブルにあったサンドイッチに、手を伸ばしたのであった。





(完)