『生きるため』。
再びアスラの口から出たその言葉に、シュリはまた戸惑いを覚える。
生きるため。
それが、今自分の目の前に居る彼女が盗みをする理由。
....命を危険に冒してまで、盗賊という悪を貫く理由。
シュリは矛盾していると思った。
生きるために何故、命を危険に晒すようなことをしているのか?
自分でいうのも何だが、この国は平和なはずだ。
これまでシュリは、この国をただ平和にすることを目的に国を治めていた。
だから、そんな盗賊なんて道わ進まなくたって生きていける。
皆、笑顔で
何の苦もない平等な暮らしを送っているはずだ。
なのに
「今のこの世界....この国で生きてくために
私は盗賊として生きてるんだ」
なのに何故?
「───フンッ。戯言だな。
この国は平和だ。平等だ。盗みなど働かなくとも生きて行ける。
───所詮口だけ。
本当は己の欲を満たすために、悪業を働いているんだ。
....お前だって、そうだろう?」
そうだ。
所詮は、悪の道を進む者。
この、牢の中に居る彼女だって同じ。悪は悪で変わりはない。
今、このアスラという少女が言った言葉だってきっと
彼女が....悪の道を行く者が得意とする嘘の一つ。
(俺は、そんな下らない嘘に引っ掛かる程
────馬鹿じゃない)
シュリは頭の中でそんなことを考えて、アスラの言葉を、冷たく突き放した。

