蒼の王様、紅の盗賊

 
 
 
 
 
 
 
アスラは、そう言いフフッと悪戯に笑う。

そして片手で担ぎ上げていた大きな荷物を、地面へと下ろした。






「ジル。これが今日の収穫だ。
───こっちの取り分は.....これでいい。後はみんなで分けてくれ」




地面へと下ろされた袋の中に入っているもの、それは野菜やら、布やら....どれも高価なものとはとても言えないごく普通の日常品の数々。

それを袋の中から幾らか引っ張りだすと、残りを先程からジルと呼んでる老人へと差し出した。







「────すまんな、アスラよ。
....これでまた我らは救われた」




差し出された袋の中を軽く覗くと、ジルと呼ばれた老人はアスラの方を見据え笑みを溢した。






「───礼なんかはいらない。
....とりあえず、今日は疲れた。少し休む」




自分に向けられた笑みに、アスラは照れを隠すように視線を横へと逸らす。


そしていつの間にか、自分の置いた荷物の周りに集まってきた子供たちに温かな目で一瞥すると、そのまま建物の中へと入っていった。











「アスラは.....本当にいい子ですね。
あの子、口は多少悪いですが私達に生きる希望を与えてくれる」




逃げるように、建物へ入っていったアスラの後ろ姿に一人が呟く。





「あぁ───本当にいい子だよ。
我等はあの子に....何度救われたことか」