ほんの近頃まで城に籠もり切りであった彼は自らの意思で城を抜け出すとは、よもや護衛の兵も付けずに街へ繰り出すとは誰も想像すら出来まい。
彼が城を抜け出すこと。
そしてこれから彼が何をしようかということを知る者は隣を行くレストとそのレストに従うごく一部の者しか知らない。
彼の身の回りの世話を仰せつかる侍女達には体調が優れぬからそっとしておいて欲しいと告げ場を離れせその代わりレストの私兵を警護に付け、念の為に部屋には彼の影武者を置いておいた。
シュリが城から居なくなったことに城の者は誰も気付かない。
城の中にはいつものように変わらぬ日常が流れていた。
............。
ザアァッ......。
深く被ったフードの下から見たのは今まで生きてきた中で見たこともないような殺伐とした場所だった。
城を抜け出し活気溢れる街のメインストリートを抜けて細い路地裏を入り更に奥へと行った場所。
城を出てからほんの三十分も歩かず辿り着いたその場所の空気は明らかに淀んでいた。
今にも崩れそうな古い建物がごちゃごちゃと犇き合うそこは昼間であるはずなのに薄暗く、垂れ流された排水から鼻が曲がるような異臭する。
実に不衛生。
到底人の住処とは考えられない。
「............此処は本当に俺の国なの......か?」
どうにも信じられなくてシュリの口からそんな言葉が零れた。

