「まだあの事件に決着はついていないのです。
決着が着かぬ限り貴方はあの日あの時に囚われたまま―――。
私も御手伝い致しましょう。
あの日の決着を着ける、そのためにも貴方の足で大きな一歩を踏み出すのです。
まずは接触を図りましょう。
ごく自然に奴等に紛れ込み情報を得るのです。
さすれば自ずと辿り着けるはずです、貴方の求める者達に」
「.........」
あの事件。
その言葉に冴え返るのは、血塗られた幼き日の記憶。
幸せが全て奪われた。
甦るのは鉄臭い血の臭いと指先に伝わる冷たくなって動かない大切な人の感触。
粉々のシャンデリアに床に広がる血の海。
感じる悪寒。
感じる絶望。
あの時の情景も感情も一欠片も逃すことなくシュリの脳裏に刻まれる。
蒼の王様。
そう呼ばれる彼を作り上げた元凶となる事件。
―――。
この国の者ならば誰もが覚えている。
だがあの惨劇をここまで鮮明に思い出すことが出来るのは恐らく彼しか居ない。
常に彼の中に存在し続ける記憶がレストの言葉によって意識の最前線に引きずり出される。
「.......あの事件に、奴等が―――紅の盗賊達が関わっているというのか?」
「恐らくは。
奴等は天下を揺るがす大悪党。奴等は人以下の輩。
あのような残虐な所業、人の出来ることでは御座いません。
奴等はきっと、いや絶対にあの事件に関わっております」
「ッ!」
「全ては奴等を捕らえれば判ることに御座います。
勿論貴方はこの国の王です。
御命令とあらば私や他の者達は従いましょう。
私の言葉は畏れ多くもシュリ様への進言に過ぎません。
決断を下すのは、貴方です」
........。
ッ。
数秒沈黙が支配する。
レストの隻眼にシュリの持つ美しい蒼が映し出される。
「..........判った」
―――。
沈黙の後、シュリの短い一言だけが響き渡った。
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