「..........何故そんなことを聞く?」
気付けばそう問いていた。
無意識、というか反射的な言葉だった。
「何故ってクロア、貴方も判るでしょう?
.........このまま付いて行けば確実に私は貴方の足手纏いになるわ。
そうでしょう?
幾ら何でも判るわ、それくらい」
――――。
正直、事実だった。
彼女の言うことは正しくて否定することも出来ずに俺は黙る。
「私はこの世の中の事を何も知らない。
私の力では誰かを、自分の身さえも守れない。
でもこれだけは判るわ。
今のこの世は無知で無力な子供を背負って渉れる程甘くは無いはずよ」
まだ十にも満たないはずの子供が言う。
真正面から己と向き合い己の弱さを認めて、彼女は正しいことを言う。
哀しいことを言う。
..........。
彼女は、自分よりずっと幼いはずのこのアスラという少女は俺を案じていた。
俺はこの少女に案じられていた。
これから先の未来を。
この最低最悪な俺の人生を。
――――。
俺は彼女から何もかも全てを奪っていた張本人であるはずなのに。
最も憎しみ恨むはずのこの醜悪な俺を。
彼女は心配するのだ。
憎しみの意も恨みの意も向けること無く、自らが俺の人生の負担となってしまうことを案じているのだ。
「私ね、足手纏いは嫌なの。
私のせいで誰かの人生が、貴方の人生が狂ってしまうのは嫌なの」
何を馬鹿なことを。
俺は誰かに身を案じてもらえるような立派な人間じゃない。
ましてやこの子は、俺というこの存在に全てを狂わされた最大の被害者。
そんな彼女に未来を心配される理由も権利も、俺には微塵も無い。
寧ろ未来を案じ全てを背負わねばならないのは自分の方である。
彼女と出逢う前の俺ならば容赦も躊躇いも無く切り捨てただろうが、今はどうにも違う。
彼女を、この子を捨て置き切り捨てるというその選択肢すら俺の中に存在していなかった。
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