蒼の王様、紅の盗賊








「.......だけど、よかったわ。
アスラも貴方も、こうして無事に此処に居られて」






どのくらいの時間が経っただろうかは分からない。


レイアとバルトは暫らくの間、アスラの眠るその姿を見惚れるように見つめていた。

そしてゆっくりとアスラから視線を外したレイアは、まだアスラを見続けるバルトに視線を逸らした。









「.........」



レイアの言葉。
聞こえているのか、聞こえていないのか。

バルトはその言葉に答えないで、ずっとアスラの方を見つめている。




その瞳は真剣で、月明かりにキラキラと哀しげに煌めいていた。

いとおしくて堪らないような、だけど一歩踏み出せないままに止まってしまっている感情が浮かんで消える。






琥珀色の瞳は、何を思って彼女を見ているのか。

そんなことを考えながら、レイアはアスラを見つめ続ける彼の言葉を待った。







「..........アスラが生きていてくれて、それは本当によかった。

だけど、だけど――――俺はアスラを守ることが出来なかったんだ。俺の力が足りないせいで、アスラが傷付いた。
だから今こうやって、アスラは眠ってる」




黙り込んでいたバルトが、ゆっくりとそう口を開いたのは沈黙が暫らく続いてからのことだった。


紡ぎ出されるその言葉は普段のバルトからは考えられない程に重く、何処か感情を押し殺したような声。

まるで、別人のようにすら見えてしまう。