そして非常にゆっくりとした動きで、声のする方を振り返る。
まるで今初めてレイアの存在に気が付いた、そんな感じだ。
振り返る彼の自慢の紅茶色の髪はやつれたように乱れ、彼の琥珀色の瞳は充血している。
そして、おそらく今まで泣いていたのだろう。
彼の目元は、腫れぼったく少しだけ赤くなっていた。
「.......何だ、レイアか」
バルトの声は、元気はなく心なしか枯れているようだった。
「あら、私じゃ不満かしら?」
「い、いや....そんなことはねぇけど」
振り向いてこちらを見るバルトの姿に、レイアはわざと少しだけ笑いを含ませた声で返す。
そして二人の間を遮る薄いカーテンの幕を、片手を伸ばして取り去った。
カーテンで曖昧だった互いの顔がこれではっきりと分かるようになり、琥珀色の瞳と紺色の瞳が重なる。
「...........それで、アスラの様子はどうかしら?」
互いの姿がはっきりして、お互い見合わすようにして暫らくの沈黙が流れる。
その沈黙は周りの静寂さと重なって時間の流れをゆっくりにし、そんな沈黙をレイアの言葉が断ち切った。

