出来ることならこのまま何処かに走り去り逃げてしまいたいものだが、どうせ逃げられやしない。
それは分かり切ったこと。
そう思った私は、何の抵抗もせず言われるがままに外へと出た。
「――――あれが、紅の盗賊....かよ」
「うそだろ?
あれ....女じゃねぇか」
外へと出て、最初に聞こえてきたのは何処から発せられたか分からないそんな声。
私のことを言っているのは確実だろう。
この場で今注目を集めているのは私であって、今この場を騒がせている"紅の盗賊"というのも私のことであって。
この今から始まる一種のイベントの主役も私であるのだから。
「罪状は幾重に渉る極悪非道なる窃盗。国中を『紅の盗賊』の異名を持って騒がせた罪は、死にあたる程の重罪。
これにより、紅の盗賊アスラを死刑に処す」
低い声が、私の罪状を民衆の中で読み上げる。
そう。
私―――世間では紅の盗賊と言われている私アスラは、今から始まるこの....この公開処刑という名のイベントの主役。
つまり私は今から、この場で処刑されるのだ。
この広場を埋め尽くす程の民衆の前で、極悪人としての汚名を着せられて命を断たれるのだ。
人を殺したというわけではない。
ただ私は盗みを働いた。
己に誓った正義を貫く。そのために。

