蒼の王様、紅の盗賊

 
 
 
 
 
 
だが彼等にも、そんな王が冷酷で血も涙もない....恐ろしいものに見えてしまう時があった。




それは王がこの世で一番憎む道を歩む者たちを前にした時。
つまり『悪』の道を歩む者たちを前にした時。


その時ばかりは王の瞳から、人間らしい温かな光が消え失せる。
透き通るような蒼い瞳が、暗く深い蒼になる。





王は、決して悪を許さない。
それが例えどんなに小さな悪であろうとも、見逃しはしない。


悪は悪。
彼にとってどんなに小さなことでも変わらない事実であり、忌まわしい己の中に封じ込めた記憶を蘇させる元凶でしかない。




罪人を前に、冷酷に見下すその瞳は.....彼に仕える兵だけでなく見るもの全てを震撼させる。

それほどまでに、恐ろしく悍ましいものだった。





そんな皆を震撼させる王の姿。
その姿は噂となって広がり、その王の姿を街の者たちの間では、隠れてこう呼んでいるらしい。



『蒼の王様』。

罪人を見下す氷のような残酷な視線と彼の瞳の蒼。


一体、誰が呼び始めたかは知らないがいつのまにか、その名は浸透していて....他の国にまで及んでいるとか。


本人は、多分そんなことには気が付いていないだろうが、蒼の王様―――王・シュリの名はもう誰もが知っていた。










「────やはりあの方は....あの事件が忘れられずに未だ抱え込まれているのだろうか」