蒼の王様、紅の盗賊

 
 
 
 
 
 
 
暫らくのやり取りが、二人の間で続く。

やはり両者の言葉の中の皮肉の色はまだ消えない。
だがアスラの放った"悪"という言葉に、シュリの表情が一瞬強ばり、先程より少しだけ取り乱した声で言葉を返す。


そしてそのまま暫らく黙ると、その後また言葉を続けた。







「......お前などには判らない。

悪というのは人から―――何の罪もない者から全てを奪い去る。何もかもを。
そして悪は笑い、何の罪もない者たちが泣くんだ。奪われたものは戻ってこない.....そして心には大きな傷を負う」



シュリの声が、低くなった気がした。
顔からは先程まで浮かべていた皮肉な笑みは次第に消え去っていき、それから凍り付くような悍ましい程に冷たい表情へと変貌する。



――――ゴクンッ。

シュリの周囲に、いつの間にか暗い闇のようなものが渦巻き始めていることに、アスラは気が付き思わず息を飲む。
何か悪寒に似た恐怖が、アスラを襲った。










「――――悪は排除すべきもの。罪の大小など関係ない。
ただ、抹消するだけだ。この国から.....この世界から」



シュリの言葉から、次第に人間味がなくなってきた。

発するその言葉は、感情が何処かに飛んでいってしまったように機械的になった。
冷たく見るものを凍り付けさせるような蒼の瞳には、紅く燃えるようなアスラの瞳が映し出されるだけ。それ以外、何もない。