困ったような声を出し、バルトは草の陰から逃げ道を捜すべく様子を伺う。




城門まではあと数十メートル。


走っていけば、何とか逃げ切れそうだが周りには何人かの衛兵が。
今、此処から飛び出して逃げれば確実に見付かる。

逃げれる可能性はあっても、リスクは高い。





バルトは、他に道はないかと周りを見渡す。

草と草の間からの、その狭い視界に映るのは侵入者である自分を捜す衛兵と慌ただしい城。
そして城の敷地をグルリと囲む、そびえ立つ城壁。







「城壁?」



バルトは視界に入った城壁を凝視した。
高さは5メートル程。上れない高さではない。





「走って城門から逃げるより、城壁を上った方が.....早いか」




衛兵に見付かることを覚悟に城門に向かうより、この暗がりに紛れて城壁を越えて脱出する方がリスクも低い。

しかも丁度バルトが今隠れている草陰の後ろが城壁で、運の良いことに周りには木があって見付かりにくい。



自分の侵入がばれた以上、城の警備は時が経つごとに厳しくなる。
迷っている暇はなかった。






「―――よし、決まりだな」



バルトはそう決心を固めて、隠れていた草陰から身を縮めたままの状態でゆっくりと背後にある城壁に近付く。

少しの物音も立てないよう、細心の注意を払いながら。
こういう時にこそ、盗賊としての技術が生きるというものだ。