それから、ジャージに着替えた。もしもの時、友達に見つからない様に地味な色を選択した。自分なりのカモフラージュだ。

アニメフィギアの発売時間は、12時半で、今の時間は、9時半だ。

此処から、秋葉原まで電車で30分も掛からない。

顔を洗い、歯を磨き、朝食を済ませ、家を出た。

秋葉原に着いたのは、9時55分だった。

暇潰しに、ゲームセンターで時間を潰そうと思い、中に入った。

自分が気に入ったフィギアのUFOキャッチャーが在ったのでやってみることにした。

UFOキャッチャーのアームが弱くて、如何にも落ちそうなフィギアが落ちない。

それを数回やったものの同じ結果だった。


「この、アーム弱いタイプのヤツか」


なかなか落ちないので、店員に言おうかと思い、店員を探す。

店員は、子供が硝子を叩かない様に見張っていた。


「あの、あそこのUFOキャッチャー10回やったんですど、中々落ちなくて、場所を移動出来ませんか?」


店員は、数秒ほど沈黙して、それから言った。


「はい、大丈夫ですよ。どこでしょうか?」


さっきやった、UFOキャッチャーの場所に連れていく。


「此処です」と僕が言う。


店員は、持っていた複数の鍵の中から、一つの鍵を挿して開けた。

それで、取りやすい場所に置いてもらう。


「これで、宜しいでしょうか?」


「はい、大丈夫です。有り難うございます」と僕は言った。


僕がそう言うと、店員は、もとの場所へ戻って行った。

実は、10回もやっていないのだ。

本当は2回しかやっていない。

数を盛れば、「店員が断れないだろう」という、いつも通りの策だ。

というよりは、悪知恵だ。

その結果、お目当てのフィギアを手に入れた。

UFOキャッチャーをするときは、クレームを付けて、最終的には、お目当てのフィギアを手に入れるという方法でいつも手に入れてきた。

今では、UFOキャッチャーで獲った数が数え切れないほどに、自分の部屋に飾ってある。