コンコンコン…―――



「はい。」



掎蹟が帰って少しした頃、病室のドアがノックされた。



「なんや、えらい快適そうやな。」


「飴魏蜜穿…!」



少し開いたドアからは、柱に寄りかかるようにした背しか見えないが、声から蜜穿だと分かる。



仕事以外のことを上司としてのプライドが邪魔をし掎蹟に聞くに聞けなかったので、どうしたものかと思っていたが。


まさか本人が来るとは思わなかった。



「貴様、体調は良いのか?もう大丈夫なのか?」


「……今のあんたに言われたないわ。」



入院中の人間から言われる言葉ではないので、呆れる蜜穿の反応は当然だ。



「別に見舞いに来た訳やないよ。それにしてもうちのデータ、結構役に立ったみたいやな。」


「ああ。だが、あのパスワードはなんだ?俺は分かったが、他には解りづらいだろ。」



「パスワードゆうんはそういうもんやろ。」


「それはそうだが…」



殊犂は文句を言うが、蜜穿も分からないようにと必死に考えた結果だ。


殊犂にしか、分かって欲しく無かったから。



荊蜻のような人間が他に居ないとも言い切れなかったから、余計大変に悩んだ。