「………………。夕飯は鍋か?」


「え?あぁ……、好みが分からなかったし、食べやすいかと思って。」



居なくなってると思っていたくせに、買ってきた食材は2人分で献立も蜜穿の為のようだ。



「ほんま、単純やわ。」


「え?」



小さく呟かれた言葉を聞き取れぬままの殊犂からスーパーの袋を奪うと、蜜穿はキッチンへと向かう。



「なにしとん?はよ、作るで。」


「あ、あぁ………」



蜜穿の態度の変わりようについていけていないのか、呆然とする殊犂を呼んで、鍋を作り始めた。



「少し顔色が良くなったな。咳も止まってきたし。」



食事を終え一息つき嬉しそうに言う殊犂に、そういえばと蜜穿は思う。



食欲不振だったのに、ちゃんと一人分食べれた。


咳も息苦しさも無い。


胸の痛みも倦怠感も感じない。



「だが、完治してないはずだ。病院嫌いだろうが、明日連れて行くからな。」


「お巡りさん、仕事やろ。」



「非番だ。そんな心配しなくていい。」



「心配はしとらん。」


「……早く寝るぞ。」



殊犂の中では決定事項のようで、無駄な会話だと言わんばかりに寝る支度を始めた。