「被害届?そんなもの、貴様達が怖くて出せないに決まっているだろう。悪徳ヤミ金が。」


「金に困っとる人に貸して、何が悪いんか分かりまへんなぁ。みな喜んで借りていきまっせ。」



「貸すのは大いに結構だ。金利がトイチじゃなければの話だがな。」



絆栄商事は表向き一般的な金融会社なのだが、一部の借り主に対して金利がトイチ(10日で1割の利息)である為、殊犂の言う通り貸金業法違反に当たる。



ただ、西広警察署……ひいては大阪府警の職員からもその行為は黙認されている。


何故なら。



「なんや。かしゅーに、ことりちゃん。またやっとんのかいな。」



「あ、こーぞーさん。いらっしゃいませ。」


「いつものでええですか?」



「おお、つーちゃん頼むわ。」



店内でバトっているにも関わらず、いつものことだと、にこやかに応対する器の大きい店主―――緑青剣(リョクショウ ツルギ)とその妻―――緑青碑鉈(リョクショウ ヒナタ)。



そして、呆れたように店に現れたこーぞーさんと呼ばれた男―――赤根楮筬(セキネ コウゾオ)は、大阪では有名な朽霊(クチミ)会に属する……いわゆるヤクザの組長である。