「一体何がしたいねん…」



遠ざかる殊犂が、痛みを増している頭痛のせいか少し歪む。



「げほげほ………甘っ…」



袋からスポーツドリンクを取り出し飲んでみるも、ジュース類を飲まない蜜穿とっては甘過ぎた。


殊犂達には当たり前の他人を心配することも蜜穿にとっては甘過ぎた。



弱いと言える程、強くなくて。

強がりを言える程、弱さを見せれなくて。



両親の望む通りになりたくて、惚けて痛みに知らないフリをした。


嘘を付く程でも無い、ただほんの少し自分に起こった事実を歪ませる。


両親の望む自分に近付ける為にする、ただそれだけのはずだった。



だけど。


コンコルドの誤謬と呼ばれるものに両親が当てはまると知ったのは、それが裏社会の常套手段と気付いた頃。



そこから学んだのは、何も望まなければ何も生まれないこと。

悲しみも絶望さえも。



だから。


無が希なんだと、蜜穿は何も願わないことにした。



常套手段を身に刻みながら、誰にも分からないように終わらせたのだ。



「ごほげほ…」



悪寒と倦怠感に引っ張られるようにして床につく。


携帯のランプにも気付かずに。