荊蜻のことがマスコミに流れるようなことがあれば、栲袴や蜜穿、その先の廓念会まで辿り着かれる可能性がある。


だから、雇い主である廓念会は内々に処理されるよう、蜜穿に仕掛けさせたのだ。



「何故どこもかしこも、上は騒ぎを恐れ真実を隠そうとするんだ。」



どのような理由があろうと、犯罪者を野放しにするなど言語道断だと殊犂は思う。



「独裁者ちゅーんはみな同じや。骸を光を優しさを踏みつけていくねん。逆に、骸を闇を悲しみを背負っていくんが英雄や。」



「なんだそれは?」


「RPG好きなバイト仲間の受け売りや。」



切り捨てるか、共に行くか。


今の蜜穿とって、独裁者はたくさん思い浮かぶのに、英雄となると浮かんでくるのは1人だった。



「ごほごほ…ごほごほごほ…げほげほ……」


「…!……話はもういいだろ。俺は仕事中なんだ。」



部下に任せたので仕事中ではないのだが、咳き込んだ蜜穿につい嘘をつく。



「せやったら、なん…ごほげほげほ…」


「もういいから、安静にして外に出るなよ。」



最後まで意図が分からず尋ねようとするも咳き込む蜜穿へ、それだけ言うと殊犂は帰っていった。