とりあえず、人に見られない場所に逃げ込んだ。
階段下の、物置。廊下を通る人達の声は聞こえるが、姿は見えない。
「なに?こんなとこに呼び出して」
この人はぼんやりと、色褪せた声で言う。
こいつのせいであたしは…、あたしは…!
昨日受けた屈辱を噛み締めながら、安堂くんと向き合った。
見た目が人よりちょっといいからって、いつもトコトン面倒くさそうな顔をしている。
(昨日までは、この人の、この外見に騙されてたのよ…!!)
目の前にある、彫刻のような顔立ちに怯まぬように頭を振った。
「話がないなら、教室戻ってもいい?」
ため息をつきながら、安堂くんが言う。
「は、話があってここに呼んだに決まってるでしょ!?」
「…ああ。――じゃあ、ごめんなさい。」
突然謝られ、突然頭を下げられた。
「はい?」
訳が分からず、首を傾げた。
「君とは付き合えません。ごめんなさい」
そう言って、ペこりと頭を下げる。
「ちょっと!あたしは別に告白しようなんて…!!」
してないのに、何故かあたしが赤くなる。
そんなあたしは気にも留めずに、安堂くんが顔を上げる。
「あ、違った?」
なんて奴だ。

