そうだ。

小林は病み上がりだ。

それなのに寒い中、来てって言ったら来てくれた。

教えるためとはいえ、怖い思いもさせたのに、それでも今、ここにいてくれる。


(脅されたら、誰にでもこういうことすんのかな…)


横目でジッと小林を見つめて、小さく吐息を吐き出した。

……客間に、連れていこう。

そーっと小林の指先をめくって、繋いでる手を離した。

その瞬間、むにゃむにゃと小林は床に倒れ込む。


「………!」


足は無造作に開いた状態で、ぶかぶかの俺のスエットを着て。


(……肩、見えてる)


床に下りて、小林の服を直してやった。

……ほんとのほんとに、この、女…!


(………………!)


小林を抱き上げて、ベッドに寝かせた。

湯たんぽが欲しいって思っていたからちょうどよかった。

明日の朝、起きたらこいつ、どんな顔するかな。


(………………、そうだ)


ちょっとからかってやれ。

寝返りを打つと、すぐさま首筋があらわになるから、それを付けるのは容易だった。

前、付けた痕は、もう気付かないくらいに消えていた。

そんな俺のイタズラに―――…。








「………ッ、きゃぁぁぁぁぁぁぁ………!!!!!!」


次の日の朝、予想通り。

小林はお得意の、つんざすような雄叫びを披露してくれた。


(…ざまぁみろ)