普段なら絶対に近付かない。 それでも、今日のあたしはひと味違った。怒りというものは、人を何倍でも強くしてくれる。 「あ、安堂くん…!」 昨日と同じく、耳から黒い紐を垂らしていた安堂くんは、突然目の前に立ちはだかったあたしに興味なさげに視線を向けた。 「…なに?」 「ちょ、ちょっといいかな!?」 クラスメートたちが怪訝そうに見ているのも無視して、安堂くんを呼び出した。