ダンダンダン!

ダンダンダン!

…と、脱衣所のドアを叩いている。


(小林って、ほんっと…)


「大丈夫!? 倒れてない!? 溺れてない!?」

「……大丈夫だよ…」


懲りない女らしい。

さっき、近所迷惑になるほどの悲鳴を上げたくせに、20分もすればシレッとしている。

どういう反応を取るかって分かった上で、俺は敢えてその姿で出た。


「…キャーーーーーッ!!!!!!!」


やっぱり小林は、叫んだ。


『上半身裸で出て来たら…、風邪引くでしょーーーーっ!!!!!』

「………。」


やっぱり、生きた化石候補の考えることは違うらしい。

そして今、俺をベッドに座らせて、自分は傍に置いていた椅子に座って、鼻歌まじりで俺の髪を乾かしていた。

ちょっと音がズレている。

ドライヤーで、俺の髪をふわふわ触って、やっぱり母親気分。


「安堂くんってさー…、これ、何色に染めてるの?」

「地毛」

「えっ!」

「マジ」

「…うっそだ~!だってこんな色って~」

「母親譲り」

「え?」

「母親、外国人だもん」

「えっ!!」


……騙しがいがあって面白い。

それをそのまま鵜呑みにして、だけどそわそわと俺の髪を触っているのは、それが本当なのかと知りたいわけじゃなさそうだ。

そのそわそわの理由はきっと―――。


「数年前に亡くなったんだ」


きっと、この話。


「そ、そうなの…!?」


平然を装ってるけど、小林はそういうのマジで下手。