それからしばらくは、安堂くんが何やらぶつぶつ言っていたけど、あたしはそれをぜーんぶ無視して、自分の分のご飯まで作った。

発熱、息切れで赤い顔した安堂くんも、もう抵抗するのを諦めたんだろう。

何も言わずに、二食目となるうどんをすすっていた。


「……マジで、泊まる気?」

「何よ、あたしは有言実行を貫く女よ!」

「……彼氏、出来ないくせに」

「なにぃっ!?」


いつものように嫌味を言うと、ふいっと顔を背けている。

だけどさっきみたいな、別人みたいな安堂くんはもういない。

さっきのことは、熱のせいだと許してあげるとしよう。


「……何笑ってんの?」

「べっつにー。何でもないよ」

「…………、キモ」

「何ですって!?」


だって安堂くん。

あたしが部屋に帰ってきた時。

めちゃくちゃ驚いた顔してたけど、だけどその顔の片隅で、なんだか嬉しそうな顔したんだもん。


(ホーント、安堂くんってか~わいいっ)

(……ほんっと小林って………。分かってんのかな)


二人の夜はまだ、始まったばかりだ。