(なんつー顔ぉーー!!!)


安堂くんが天使みたいな笑顔を浮かべたのなら、あたしは骸骨みたいな顔で佇んでいた。


(最低だ最低だ最悪だ…)


髪を整え、せめてもの思いで眉だけ描いて、うなだれたまま部屋に戻った。


「お待たせ…」

「遅かったね」

「…ちょっとね。いろいろと」

「今日来たのはお詫びをしたかったから」

「へ……?」


力の無い目で安堂くんを見た。


「お詫び…?」

「弁当。ずっと作ってきてくれてたでしょ?」


あたしの部屋で何故かくつろいでいる安堂くんが、あたしを真っ直ぐに見据えていた。


「き、気付いてたの!?」

「まーね」

「じゃあ何で……っ」

「だからお詫びするって」

「お詫びって…、いったい何をするのよ」


安堂くんがニコリと笑っている。

でもこの笑顔はさっきの天使の微笑みとは違う。

これは、どちらかというと…。


「小林にとって嫌なことから解放されるお詫びだよ」

「なにっ!?」


口では、めちゃくちゃいいことを言ってはいるんだけど。

この笑顔は、どちらかと言うと……。


「小林の風邪、もらってあげる」


(なにーーーーーー!!!)


本当の心の叫びは声にはならなかった。

安堂くんがあたしの腕を掴んで引き寄せる。


あたしだってバカじゃない。

2度目がやってくるってことくらい分かる。


「ちょちょちょ…!ちょっと待ってよ!この風邪、本当に極悪で…! ご、ごほごほごほ! ――ほらっ!まだこんなに咳出るし!」

「だからもらってあげるんだよ。辛いんでしょ?」

「あっ、熱が…!まだ熱もインフルエンザ級に高いわけで…」

「さっき7度3分って言ってたよ?」