「え、…なんと!?」


今、安堂くんのことを考えていた。

それを見透かされているのなら、これ程恥ずかしいことはない。

ジッ、と星屑を浮かべる瞳に見つめられ、あたしは泳がすように視線を逸らした。

キスのことは、慰めの延長として処理することにした。

なぜならその後、何か変わったことがあるわけでもなく、安堂くんがそれについて触れることもなく。

そりゃ、あんな美人でオトナな先生と3年も付き合ってきたんだ。

キスの一つや二つ……、ていうかあれはキスでもなんでもなかったのかもしれない。(最低なことに)


……でも。

その綺麗な瞳で見つめるのは反則だ。

息が、苦しくなる。


「クリスマス、そんなに誰かと過ごしたいの?」

「―――え?」


突然の質問に、ポカンとした。


「……違った?」

「ち、違わないっ!!」


安堂くんのことよりも、クリスマスのことを考えてる時間の方が断然長い。断然!


「クリスマスなんて何が楽しいの?ただ寒いだけじゃん」


安堂くんは不機嫌そうに、お弁当を食べながら鼻を鳴らした。

知らないのだけど、安堂くんは知らないのだから仕方ないのだけど…、


(人様の誕生日を~~~~!)


ただ寒い日、で終わらせやがった。


「なんで!ツリーにイルミネーションにケーキにプレゼントだよ!? サンタクロースだってくる日だし!夢みたいな1日じゃん!」

「……サンタクロースなんて作り話じゃん」


どうしてそんなに夢がないのか、聞いていて腹立たしい。


「あのねぇ、安堂くん!? そんなんじゃ女の子にモテないよ!? 女の子はロマンチックな男の子のことが好きなんだから!」

「……へー、それ、何の統計?」

「雑誌の!安堂くんもたまにはこういうの読んだ方がいいよ!!」


鞄の中に入れていた、ティーンズ雑誌を広げて見せた。

安堂くんはパラパラと、興味があるのかないのか無表情にめくっている。


「……ふーん。俺、全然当てはまんないや」

「でしょう!? だからもっと努力して……………、」