時間というものは、この地球上で唯一平等に与えられているものだという。
今年はやけに早かった。
目まぐるしく変わる環境よりも、変わらぬ日常の方が時間が経つのは早く感じる気がした。
毎日が勉強に追われる、単調な日々。
それでも日増しに強くなりゆく想いに、胸を焦がす。
長く伸びる影を自分で踏みながら、本屋からの帰り道、家を目指して歩いていた。
時計の針は待つことを知らない。
後ずさることも知らない。
だけど心は後ろを振り返ってばかりだ。
最近急に肌寒くなった。
気がつけば、10月の最後の日曜日になっていた。
まだ早い落葉。
青空は少しずつ近くなって、そして夜空は遠くなる。
眩い光と仄かな光。
目を瞑りたくなるほど強烈な想いと、穏やかに彩る柔らかな想い。
綺麗なのはどっちだろう。
最近はそんなことばかり考えていた。
そして未来を見据えることって、ひどく億劫で寂しくなる。
それがなぜなのか、理由を探してはため息をついてる。
あたしの未来には、絶対的に足りないものがあるんだ。
願っても届かない。
叫んでも響かない。
四方塞がりのこの想いを、どうやったら無くしていけるんだろう。
手放していけるんだろう。
足元に転がった、気の早い落葉を爪先で蹴飛ばして、ふいに視界に入った。
目の前にこちらを向いて立ち止まっている靴。
もう、家の前。
門の前。
靴から足へと視線が移り、ゆっくりとその姿へと上がって行った。
その姿を見つめるまでのカウントダウン。
比例して、鼓動はどんどん速くなる。
その顔を見つめてしまえば、この微弱な心臓は止まってしまうんじゃないかって思った。
止まってしまってもいいとさえ思った。
今、目の前に――……。
「………なん………で、」
ここにあるはずのないその姿が立っていたから―――。