安堂くんと仲良く(!?)なってから1ヶ月。

初秋だった季節も、もう立派な冬になっていた。


「さっむいねぇ…、知枝里?」


クリスマスまで1ヶ月。誕生日まで1ヶ月。

彼氏のいないクリスマスと誕生日は16回で充分だ!!


「え、あ、なに!?」

「なんて本、読んでるの?」

「えっ!?」


“1ヶ月で彼氏が出来る本”

“1ヶ月でくびれの出来る本”

“1ヶ月で……”


「いや、その、これは…!」


なべっちの前から、広げていた本を慌てて隠す。

どうやらあたし、おかしいんだ。

猛烈に、何かがおかしいんだ。

怒りの矛先でしかなかったはずの彼の言動に、どうやらあたし、ほだされ始めている。

すがるような姿を可愛いって思っちゃったし、お弁当だって一生懸命作っちゃってるし、……何より。


(あたしのファーストキス……っっっ)


何をホントに、ぶちゅっとヤラれてるんだ。

逃げられただろ!

いや、されるなんて思わないだろ…っ!!


(経験ないのに…っ!!!)


少しでも気が緩むと、すぐにあの時の感覚が蘇る。

蘇ると必ず、真っ赤になってしまうので、精神の統一を図って思いださないようにしている。


「と、とにかく!もうロンリークリスマス兼ロンリーバースデーは卒業したいの!」


本を揃えながら、平然を装った。


「確かに毎年女ばっかのクリスマスは嫌だもんねぇ?」

「でしょでしょ」

「それならさ、今年はガールズクリスマスは廃止にしよっか?」

「……え゛?」


突然の提案に固まる。


「ちゅ、中止…!? それを今、決めちゃう…!?」


今はまだ11月24日。

クリスマスまで、あたしの誕生日まで、まだ、1ヶ月はあるのに。


「実はねー…、知枝里に言えないでいたんだけど」

「……あっ!!!」


なべっちの、右手の薬指にキラリと光るリングがあった。