「そっ!今日は参考書デートってやつ」
「……!」
突然、桜田くんに肩を抱かれて、その体に引き寄せられた。
ギュッと掴まれた肩。
さっきはあんなに抵抗出来たのに、今はそれさえも出来ない。
する、気力さえ、ない。
だって、他の人に肩を抱かれたって、安堂くんはきっと何も感じない。
今もきっと、何ともないって顔してるに決まってる。
顔は上げないままで、あたしも口を開いた。
「そ、そう…。いい参考書、紹介したんだ」
「じゃ、アンドーくん。また学校でね」
桜田くんに肩を抱かれたまま、あたしは踵を返した。
だけど次の一歩が踏み出せず、その場に立ちすくんでいた。
こんなにも弱くて、こんなにも動揺する。
心臓が取れてしまいそうなくらい拍動していて、唾を呑みこむのもやっとだった。
「ほら、大丈夫だよ」
そんなあたしに、桜田くんが耳元でそっと囁いてくれた。
桜田くんを見上げて、あたしは小さく頷く。
一歩、踏み出す。
これが何を意味しているのか、考えたくはない。
分岐点。
些細な分かれ道。
でも、確実な別れ道。
安堂くんに背を向けて、歩きだす。
安堂くんも背を向けて、歩きだす。

