校舎の裏にたどりつくと、アンドーが振り返った。

こーゆー場所で男と顔を合わせててもね。

頭を掻いて、アンドーに問う。


「話って、何?」


聞かなくても、分かってはいた。

何も読み取れない顔をしているけど、内容くらい分かる。

チェリーちゃんのことだろ。

今更なに?

つか、何で俺?

チェリーちゃんには合わせる顔がないってわけ?


「……小林の、こと」


それには返事をしなかった。

ただまっすぐにアンドーを見つめて聞いていた。


「お前、本気なの?」

「………カンケーある?」


蔑むように顎を上げて聞いた。

んだよ、それ。

元カレ面?

アイツのこと大切にしてくれ、とでも言うつもりか?


「……関係は…、ない。でも心配してる。小林って…、分かってないとこ、あるから」


心配、ってなんだよ。

こんなとこで心配するくらいなら、面と向かって謝れよ。


「あーはいはい。あのことね。あーゆー女ってちょろいよね?生きた化石にならないためにも俺がもらってあげるって言えば簡単に足開……っ」


言い終わる前に、胸倉を掴まれた。

その瞳が、無表情なその顔が、

崩れる、瞬間。


「……そーゆーのを心配してんだよ」


燃え盛る炎が瞳の中に宿っている。


………はは。

なんなの?こいつ。


まだチェリーちゃんのこと好きなんじゃん。

だったらなんで、こんなことしてんの?なってんの?


俺はアンドーを落ち着かせるように、両手を挙げた。


「ジョーダンに決まってるっしょ?俺、きっとアンドーくん以上にチェリーちゃんのこと大切に思ってるよ?
 俺だったら絶対に、チェリーちゃんの手、離したりしないから」


真っ直ぐに見据えて言ってやった。

瞳の中、燃え盛っていた炎がふっと消えたのを感じた。


アンドーは後悔している。

チェリーちゃんの手を離してしまったことを。


でも、それも、もう遅い。


「だから心配なんてしなくていーよ。俺がチェリーちゃんを幸せにするから。
 俺が傍にいてあげるから」


アンドーのことは振り返らずに、その場を去った。


後悔すればいい。

チェリーちゃんの優しい手を放したこと。



…後悔すればいいんだ。