アンドーとセンセーとの話を聞いた時から感じていた。

何か劇的な繋がりがないといけないんだと、チェリーちゃんは思っている。

たまたま、そこにいてくれた相手に癒されて、その優しさで心が救われることってあると思う。

アンドーにとって、チェリーちゃんってそういう存在だったんだと思う、のに。

チェリーちゃんは、その“たまたま”をとても低く評価していた。

その“たまたま”に重なった偶然、何万分の1だと思っているんだろう。

もしくは、何億分の1。

その偶然こそ、運命であって必然だったと思うのに。

だけど俺は、それは口に出さずにいた。

変に期待を持たせることをしたくなかった。

心の中だけで想う辛さを知っている。

期待するだけ心が辛くなることも知っている。

でも、腑に落ちない。


アンドーは何で、そんな選択をした?


そしてチェリーちゃんは気づいていない。

アンドーの瞳がチェリーちゃんを映していること。

ほんの数秒。

だけどいつも確実に。

チェリーちゃんを瞳に映す。

他には何も囚われないって顔をしているくせに、チェリーちゃんを見つめる瞳だけは痛く、熱いんだ。

だけどそれを、チェリーちゃんには言わない。

アンドーの思惑なんか知ったこっちゃない。

センセーを、他の女を選んだなら、そのままその女だけを見ていろよ。

そんな瞳で見るなよ。


……って。

まるで昔の俺みたい。


二人を見ていると、胸の奥にしまいこんだはずの自分の気持ちがどんどん前に出てきてしまう。

チェリーちゃんの話を聞くと同時に、なぜだかあの街に帰りたくなった。

きっと俺は、誰かに背中を押されたかった。


「会ってこいよ」って、

「その気持ち伝えてこいよ」って、

言って欲しかった。


傷つけてしまった恋に、

傷つけてしまった大切な女(ひと)に、

もう一度会いに行ってもいいんだって、きっと誰かに言って欲しかった。