涙が引くのを待って、二人、来た道を歩いた。
「その子に会いに行かなくていいの?」と聞いても、桜田くんは「いいんだ」と言うだけ。
その横顔は笑顔なのに、やっぱりどこか泣いている。
俯いて石ころを蹴った。
コロコロ転がって、遠くに。
このまま遠くに転がっていけばいい。
あたしの気持ちも全部。
手放してしまえるなら、はるか遠くに。
だけど、捨てたくても捨てられない。
心って、
恋って、
好きって…、
辛い。
それから駅まで歩いて、再び列車に乗った。
ゆっくりと進み始める列車の窓から、桜田くんが生まれ育ったという街を見ていた。
今、あたし達が住んでいる街と同じくらいの大きさ。
でものどかな場所。
「………あ、」
窓の外を眺めていたら、桜田くんが声を零した。
その視線が駅近くのバス停を追っていた。
あたしもそこへと視線を走らせる。
もしかして、もしかして……。
「もしかして…、あの子?」
バス停で本を読んでいる女の子がいた。
休みの日なのに、真っ黒な髪を首元で2つみつあみにしていた。
桜田くんとは似ても似つかない。
それが凄く意外で、あたしは桜田くんの顔を見た。
でも。
そういうのって関係ないんだ。
好きって、顔に書いてある。
胸が張り裂けそうなくらい、好きだ、って。
「…はは。今もまだ本ばっか読んでる」
桜田くんは遠ざかる彼女から視線を逸らして、ドカッと座り直した。
「次の駅で降りたら…、間に合わないかな!?」
「…無理だよ。俺、会いたくないって言われてるし」
「でも…!」
きっとこれは何かのチャンスだ。
じゃないとこんなタイミングで彼女を見つけるはずがない。
「今行かなければ、帰ってからきっと後悔するよ!? 今はあたしがここにいるのは、きっと背中を押してやれってことだと思う!行くべきだよ!会いに行くべき!次の駅で降りてさ…っ」
「会って何話せばいーの?何もないよ。話すことなんて。それにもういないかもしれないし…」
「桜田くんなら分かるんじゃないの!? 会って話すことは1つでしょ!伝えられない想いに苦しんでるんだから!」
息を切らして言うあたしに、桜田くんの視線が落ちる。
「言うね~。やっぱ恋してる女の子は違うね?」
なんて茶化して。
本当は、誰かに背中、押してもらいたかったんじゃないの?
それでもいーから会いに行けって誰かに言って欲しかったんじゃないの!?
「彼女に気持ち伝えられなかったら、帰ってくる資格なし!」
桜田くんを指差して言った。
視線は落としたまま、桜田くんがふっと笑った。

