「まね。困ったことに俺ってブラックリストに載っちゃってる系らしくて、授業サボる度に景山にチクられてるらしいのよ。んで、毎日のように家に来られるもんだから、仕方なく」
仕方なく、って。
「受験とか考えてないの?桜田くんって頭いーんだっけ?」
「ぜーんぜん。専門行けたらいいなーって思ってるくらい。今どき大学行ってもそんなに就職よくないしー。資格の取れる専門ガッコーにしようと思ってんの」
「……今のままじゃ専門もヤバいんじゃない?」
「あ、確かにー」
眉を寄せるあたしとは裏腹に、桜田くんはケラケラと笑っている。
唇の横にご飯粒をつけて、それを指先で拭った。
「チェリーちゃんはやっぱ大学志望なの?」
おにぎり、2つ目突入。
そういえば見かける度にコンビニのおにぎりだ。
「まぁ一応は…」
「なるほどねー。頑張ってねー」
って、全然興味なさそうだし。
今は目の前のおにぎりのことしか頭になさそう。
表情で心の中、丸わかり。
「…いーな。桜田くんは」
気付けば、ポツリと口から出ていた。
「……食べたいの? おにぎり」
おにぎりを頬張ろうとしていた桜田くんが、開けた口そのままでこちらを見た。
大口を開けていたくせに、あたしにおにぎりを差し出す。
「いやいやあたし、梅は苦手……、じゃなくて!なんかいーなーって。桜田くんっていつも人生楽しそうだよね」
たまに心に影が落ちるけど、でもそれでも普段はそれを感じさせない明るさがある。
あたしもそんな風になれたらいいのに。
気がつけば、頭の中は安堂くんのことばかり。
今、学校に来ているのが自分でも不思議なくらい。
「そ?俺、そんな風に見えてる?
ま、確かに人生楽しいけどねー。景山にグチグチ言われてても他のこと考えてるから全然ヨユーだし」
「あたしホントに苦手なの。景山先生。顔を合わせるだけで怖いんだよね」
「怒った顔は特に面白いから今度ちゃんと見てみー?」
桜田くんは笑うと、持っていた梅おにぎりを頬張った。
「景山ってね、意外とまつげが長いのよ。目尻の方は特に長くて、しかもカールしちゃってるから、今度よく見てみて」
桜田くんの言葉で、それを想像した。
……イメージと合わなくて、ただそれだけで笑える気がした。

