「どーせさ、カテキョ時代の昔の教え子ーってやつなんじゃねぇの?もしくは塾での教え子とか。ま、アンドーにとっては初恋だったとして?何か初恋って綺麗なものな気がして、特別に感じてるだけだって!初恋は実らないっていうし、だいじょーぶだいじょーぶっ」
桜田くんの言葉にぶわっと涙が溢れた。
「…って、大丈夫じゃない!?」
桜田くんが慌てる。
「あたし、安堂くん…、初恋…っ」
「えぇ!?高校で初恋!?……って俺も人のこと言えないんだけど」
それでもマイペースに、軽い口調で笑っている。
ポロッと落ちた涙はそのまま、桜田くんを見上げた。
「………へ…?」
「……ま、俺のことはいーのよ。問題は初恋が実るか実らないかじゃない」
「……………。」
この男、言ってることがめちゃくちゃだ。
「チェリーちゃんがバターンって倒れた時、すかさず助けようとした俺を、
こう、こう、こうっ、したのは誰だったと思う?」
ジェスチャー付きで再現してくれた。
その時は嬉しかったけど、今となってはそんなもの、ただの辛い思い出でしかない。
「…あの時は、まだ…付き合ってたから……」
でも。
それもカレシの義務としての行為だったのかも分からない。
今はもう、安堂くんのこと何も信じられない。
「………、やっぱりアンドーが学校に来てないのは、センセーと関係してるんだね?」
その問い掛けに、嘘は言えなかった。
張り裂けそうな気持ち。
もうこの胸にしまっておけない。
肯定も否定もせず、奥歯を噛み締めて泣いてしまった。
でも桜田くんはそれだけで理解してくれたようだった。
一緒に渡り廊下の脇に立って、外を眺めた。
「よしよし」と頭を撫でてくれた。
「青春だねぇ~」
相変わらず口調は軽いけど。
なんでこの人は、こういう時。
いつも隣にいてくれるんだろう?
こんなにも温かいんだろう?
「そーいや今月体育祭だねー?チェリーちゃん何に出るの?って俺、サボる予定だけど」
「……うちの学校、一人一種目は義務ですよ」
「え゛っ!!」
桜田くんは驚いて、あたしの頭にあった手を大きく持ち上げた。

