始業式早々、あたし達は二人、裏庭で空を見上げていた。
「何で!? 何でそれで別れないといけないの!? そりゃ受験は大切だけど、でも…!」
ナッチにも、本当の理由は言えなかった。
言ってしまっても良かったじゃない。
二人の関係をバラしてしまっても良かったじゃない。
……でも。
なんで言えなかったのか分からない。
ただ、あたしが言いたくなかっただけなのかもしれない。
先生のこと。 今は、口にも出せないんだ。
「安堂くん、頭いいしねぇ~…?やっぱ、上、目指したいんじゃないかな?」
「えぇ~!? 安堂くん、勉強しなくても上目指せるって!知枝里もそれで承諾しちゃったの!? ちゃんと嫌だって言わなかったの!?」
「……言えなかった、んだよね…。何でかな。大好き、だからかな」
行かないで、って言えなかった。
あの時は悲しみが大きすぎて、すがることなんて出来なかった。
「なんでよ~!! もしかしたらそれで変わってたかもしれないのにぃ!!」
…変わってたのかな?
先生の傍にいないで、って言ったら…。
あたしの傍にいて、って言ったら……。
安堂くんは変えてたかな?
……変えてないよね。
きっと、そう伝えていたとしても、安堂くんを困らせただけだったよね?
「いーんだよ。あたし、全力で自分だけを好きになってくれる人と付き合いたいから」
「……安堂くん、全力で知枝里だけを好きじゃなかったの?」
何故か一緒に泣きだしていたナッチが、目尻を拭って言った。
「……結局は勉強に負けちゃったわけだしね。だからいーんだ!あたしも勉強頑張って、大学でいい人探すんだ!」
「知枝里…」
ナッチが涙ぐんだ瞳であたしを見つめた。
「あたしも!あたしも大学で彼氏見つける!チョーかっこいい彼氏見つける!だから一緒にがんばろ!? 知枝里っ!!」
泣いていたナッチが、あたしを抱きしめてくれた。
「それに今月体育祭もあるし、もしかしたら大学の前に新しい恋が始まっちゃうかもしれないし!!」
常にチャンスを探しているナッチに、無意識のうちに笑みがこぼれていた。
友だちって存在に救われる。
さっきまで果てなく辛かった気持ちが、今、少しだけ楽になってる。

