―――ブーブーブー。


音楽と一緒に携帯が光った。

握りしめていたその手の中、振動が伝わった。

ディスプレイに表示された名前に、あたしは勢いよく体を起こした。


―――安堂くん。


それは、3日ぶりの電話だった。


「も、もしもし!?」

『…もしもし?小林?』


その呼び名に、ズキッと心が痛む。

些細な言葉に、心は反応する。

見えない壁。

だけど感じる壁。

胸が痛むのを堪えて、返事をした。


「安堂くん…その…」


大丈夫だった?

頭の中に言葉は浮かぶのに、声にならない。

この3日、何してたの?


―――何があったの?


それも全て、声にならない。


『……今、外まで来てるんだけど…、今からちょっと話できる?』


耳元で零れた言葉に、あたしは窓へと駆け寄る。

そっとカーテンから覗いた。

外に立つ、安堂くんの姿。

出て行っていいのか、話を聞いてしまっていいのか、嫌な予感だけが胸をよぎる。


怖かった。

でも、断ることは出来なかった。


知りたかった。

知らなければならないと思った。


いったい、何が起こったのか。

先生は、先生とは。

……どうなったのか。