キミの隣で恋をおしえて〈コミック版:恋をするならキミ以外〉



夏休みが終わる頃には、俺もすっかり丸くなっていた。

もともと理由なく吸っていた煙草をやめるのは簡単だった。

酒も。女も。

好きでもない女としたって、意味はない。

親父とはやっぱり会話はなかった。

絵梨はああ言ったけど、それが本心なのか、結局のところ分からなかった。

いわゆるオトナの建前ってやつで、なんでも信じやすい絵梨にウソを言っただけかもしれない。

だけどそれでも、俺はどうでもよかった。

今は絵梨がいる。

ただそれだけで人生が変わった。


久しぶりに学校に行くと、その空間は何も変わっていなかったことを知った。

中1の頃から口を開けば好きだとか付き合ってだとかしか言わない女子も、それを妬むように口出しする男子も。

何も変わってなくて、ある意味安心した。

学校では今まで通り、静かに生活した。

勉強なんて別にできてもできなくても関係ないけど、自分の教え方がまずいんじゃないかって不安がる人がいるから、真面目に聞いた。

成績はぐんぐん上がっていった。


「すごい!佐久良くん、学年で1位…!?」


成績表を見て、目を輝かせる絵梨。

ちょっと勉強したら、取れた。

なんて言ったら、絵梨が可哀想だから言わない。


「誰かさんの教え方が良かったんじゃない?」


そう言うと、絵梨は嬉しそうな顔をした。


「すごいすごい、えらいえらい」


俺の頭を撫でる。

いちいち、子ども扱い。

たかがいくつかの年の差で、ムカつく。


「1位取ったから、何かちょうだいよ」


ベッドに腰かけて、机の前、教科書を開いている絵梨に言った。


「えぇ~?そういうのって良くないって教育学で習ったけどー…」

「いーじゃん。別に、高価なものが欲しいとか言ってるんじゃないし」

「じゃぁたとえば何よ」

「……キス。絵梨とキスしたい」


絵梨の動きが止まる。


「なに、言って…」

「本気だよ。もうずっと女に触れてないよ。絵梨の言いつけ守ってる。だから、」

「だから!?」

「キス、したい」


絵梨が顔を上げた瞬間、触れていた。

柔らかな唇。

今まで感じたことのない感覚が、体の中を貫いた。