「ほら、そうやって。都合が悪くなれば力でねじ伏せようとする。そういうとこが子どもだって言ってんの!」
「お前に、何が…、分かんだよ…っ!! 俺の何が…っ」
「お母さんが亡くなって寂しいんでしょ?聞いたよ。お父さんに。だから佐久良を頼むってお父さんに言われたのよ!」
「………っ」
女の言葉に、俺は大きく眉を寄せた。
「あんたは何も分かってないのよ。お父さんがどれだけあんたのこと心配してるのか。ただ上辺だけを見て、俺のことなんかどうでもいいって思ってる、って、あんたが勝手に思い込んでるだけじゃない!」
「んなわけ、ねーじゃん!だったらなんで……っ、
だったらなんで母さんのこと、ずっと無視してたんだよ!? 俺にそんな気を回すくらいなら、母さんのとこに……っ」
「行ってたんだよ。お父さん、夜中、仕事が終わってから、担当の先生にお願いして夜中にお母さんのところに行ってたんだって話してくれたんだよ。でも、お母さんは眠ってて、佐久良くんは家に帰ってて…。だから知らないだけ。本当はお父さんだって悲しかったに決まってるんだよ!泣いたに決まってるんだよ!!」
そう言って、女はいつも強気な瞳を滲ませた。
「何で俺にはそういうこと、言わないんだよ…。家で会っても何も言わない。顔を合わせても、何も…」
「そんなの、お父さんが後悔してるからでしょ!? お母さんの病気、治せなかったのは自分のせいだ、って、悪化するまで気づかなかったのは自分せいだ、って思ってるから、佐久良くんに合わせる顔がないんじゃない!!」
この女が、目の前で泣きじゃくるからか、気がつけば俺の目からも涙が零れ落ちていた。
この女の言うこと、信じられるのか?
親父が、こんなこと、赤の他人のこいつに話すのか…?
心の中では冷静に、そんなことを思っていたのに、胸が熱くなって込み上げていた。
一筋の涙が頬を伝い、廊下に落ちていた。

