「もしかして昨日帰って来たの?あー、暑い。お家、入れてもらってもいい?」
「ダメ」
「そんなこと言わないでよ。アイス、買ってきたんだから」
ん、と見せられた袋の中、チョコのアイスが入っているのが見えた。
「あ、もしかしてチョコ好きなの?」
ただ、ちょっとだけ見ただけなのに、この女はそれを見逃さなかった。
「…キライだよっ!つか入ってくんなよ!」
「いーじゃない!走ってきたのよ!? アイスが溶けないよーに、って。ほら、チョコアイスあげるから、入れてよ」
「………。」
チョコアイスを受け取っている間に、女は勝手にサンダルを脱ぎ、家の中にあがっていた。
「……俺がいなかったら、このアイス、どうするつもりだったんだよ」
「この10日間、ずーっと2つずつ食べてましたけど?」
女が膨らませた頬でこちらを振り返った。
10日間、ずっと…?
この女、その間もずっとここに来てたのかよ。
「もー、どこほっつき歩いてたの!? お父さんだって心配されてたよ!?」
その言葉に、すっと表情が消えるのが分かった。
「…なわけないじゃん。俺がいよーがいまいがアイツには関係ないって」
「アイツ、なんて言わないの!お父さん、でしょ!? 佐久良くんのたった一人のお父さんじゃん!」
何も知らないくせに分かった口。
俺は瞳だけを女に向けて、小さく口を開いた。
「アンタにはカンケーないじゃん。俺がアイツのこと、どう呼ぼうと」
「そーですね。いじけてるだけのお子ちゃまには何を言っても無駄ですね!」
「…………は?」
聞き捨てならない言葉に、俺は顔を歪めた。
「今なんつった…?」
「子ども、って言ったの!いつまでも自分だけが傷ついた顔して、塞ぎこんで。髪なんか染めて煙草も吸って、お酒飲んで。俺には何もないって顔しちゃってさ。それを全部誰かのせいに、…お父さんのせいにしてるだけ。
どーせ人生つまんない、とでも思ってるでしょ!? 人生の辛さなんて何も知らないくせに!」
ムカついて、気付けばアイスも投げ捨てて、女の腕を掴んでいた。

